うちの会社のマニュアルは、ひどい状態だった。
新旧が混在している。改廃の記録もない。カテゴライズもされていない。必要な情報を探そうとすると、どこにあるか分からない。「探す」という作業が、業務の中で一番時間を食っていた。
ある時、思った。AIに探させればいい。なんなら、答えてもらえばいい。
ただ、問題があった。社内のマニュアルを外部のAIサービスに投げるわけにはいかない。情報が外に出てしまうからだ。
だったら、完全にオフラインで動く、自分専用のAIが欲しい。
そう思って、作ることにした。
私のプログラミングの経験値
プログラミングは、Progate(※1)の無料枠で少し触ったことがある程度だった。HTMLとCSSの基礎を少しやった、という水準だ。本格的なアプリを作ったことは一度もなかった。
そういう人間が、アプリを作ろうとした。
バイブコーディングで作る
バイブコーディング(※2)というやり方がある。
自分でコードを書くのではなく、「こういうものを作りたい」とAIに伝え、AIにコードを書いてもらう。出てきたコードを動かして、うまくいかなければAIに修正を頼む。この繰り返しでアプリを作っていく方法だ。
コードの中身を完全に理解していなくても、動くものが作れる。
私が作ったのは、完全オフラインで動くAIを使ったノートブックLM(※3)のようなアプリだ。インターネットに繋がっていなくても動く。社内のマニュアルを読み込ませて、「このケースではどうすればいいか」と聞けば、答えが返ってくる。
詰まる、の連続だった
「無料・オフライン」という条件が厳しかった。
完全オフラインで動くAIのモデル(※4)は、選択肢が限られる。動かすための環境構築(※5)も、ネット上の情報が少ない。詰まる場面が連続した。
対処法は一つだった。質問の仕方を変える。アプローチを変える。それでもダメなら、別の方法を探す。ゴールは決まっているから、そこへ向けて手を変え品を変え、手繰り寄せていく感じだった。
動くものができたのは10時間ほど。実用レベルになるまでに30時間ほどかかった。
完成した時に感じたこと
動いた瞬間、思ったことがある。
企業が作っているようなものを、自分で作れた。
プログラミングをほとんど知らない人間が、AIと一緒に、実際に使えるアプリを作り上げた。これは、少し前まで考えられなかったことだ。
大きな可能性を感じた。アイデアと、AIと、30時間があれば、形にできるものがある。そういう時代に入ったのだと思った。
※1 Progate:プログラミングをブラウザ上で学べるサービス。初心者向けで、無料で一部のコンテンツが学習できる。
※2 バイブコーディング:AIに指示を出してコードを書いてもらい、自分はほとんどコードを書かずにアプリを作る開発手法。2025年頃から広まった言葉。
※3 ノートブックLM:Googleが提供するAIツール。PDFや文書を読み込ませると、その内容についてAIに質問できる。
※4 AIのモデル:AIの頭脳にあたる部分。オフラインで動かすには、モデルをあらかじめ自分のパソコンにダウンロードしておく必要がある。
※5 環境構築:アプリを動かすために必要なソフトウェアやツールを、パソコンにインストールして整える作業。
——中の人T